【Vol.2 税務調査とコミュニケーション力】 まず受け止める ― 指摘を受けた瞬間の反応が、その後を決める

税務調査で最も難しい瞬間のひとつが、「指摘を受けたとき」です。
人は、自分の誤りや判断を否定されると、防御反応が働きます。特に経営者は、日頃から意思決定をしている立場ですから、「それは間違っています」と言われること自体にストレスを感じやすいものです。
しかし、その瞬間の反応が、調査のその後の流れを大きく左右します。
即座の反論が招くもの
例えば税務職員から、
「この経費については、事業関連性が薄いように見えます」
と言われたとします。その瞬間に、
「いや、それは違います!」 「そんなのおかしいでしょう!」
と即座に反論すると、議論は感情的になりやすくなります。
相手も人間ですから、強い否定を受けると、立場上さらに慎重に、さらに細かく確認しようとします。本来なら短く終わっていた論点が、必要以上に長引くこともあります。
“一旦受け止める”とはどういうことか
大切なのは、まず受け止めることです。
「なるほど、そのように見える可能性はありますね」 「ご指摘ありがとうございます」 「整理してご説明します」
こうした言葉は、相手の視点をいったん認める姿勢を示します。これにより、対話の主導権を失わずに済みます。
ここで強調したいのは、「受け止める」は「認める」ではない、ということです。
一旦受け止めることと、最終的に修正申告に応じることは、まったく別の話です。受け止めるのはあくまで「そういう見方があること」であって、指摘内容を事実として認めることではありません。
受け止めた後にすること
受け止めた後は、冷静に論点を整理します。
- その指摘はどこから来ているのか
- こちらの処理にはどのような根拠があるか
- それを裏付ける資料は何か
感情的に否定せず、まず論点を共有する。その上で、事実と根拠を丁寧に説明する。
この順番を守るだけで、調査の空気は大きく変わります。
受け止める姿勢が示すもの
「一旦受け止める」という対応は、単なるテクニックではありません。
相手の話をきちんと聴いている、誠実に対応しようとしている——そのことが伝わると、調査全体の信頼関係に影響します。
税務調査は、最終的には人と人との対話です。誠実な姿勢は、言葉以上のものを伝えることがあります。
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