【Vol.3 税務調査とコミュニケーション力】 アサーション ― 強すぎず、弱すぎず、冷静に伝える

― 強すぎず、弱すぎず、冷静に伝える ―
税務調査の場では、両極端な対応がよく見られます。
一方は、感情的に強く主張しすぎる人。もう一方は、萎縮してしまい、言うべきことが言えなくなる人。どちらも、納税者にとって良い結果につながりにくいものです。
そこで参考になるのが、「アサーション」という考え方です。
アサーションとは
アサーションとは、相手を尊重しながら、自分の意見も適切に伝えるコミュニケーションのことです。
攻撃的でもなく、萎縮するでもなく、対等な立場で誠実に伝える。それがアサーションの基本姿勢です。
税務調査に置き換えると、こういうことです。
✕「そんなのおかしいです!絶対に認めません!」
✕「…はい、そうですね…おっしゃる通りです…」
〇「ご指摘の視点は理解できます。ただ、当社としては、このような事実関係があり、この処理には合理性があると考えています」
同じ「反論する」でも、伝え方ひとつで、相手の受け取り方はまったく変わります。
税務調査では”整合性”が重視される
税務調査において、感情的な熱意はほとんど意味を持ちません。重要なのは、冷静な説明能力と、話の整合性です。
こちらに十分な根拠がある場合でも、以下のような状態になると論点がぼやけてしまいます。
- 感情的に話す
- 長々と説明する
- 話が脱線する
- 相手を批判する
どれだけ正しいことを言っていても、伝わらなければ意味がありません。
事実と根拠を整理して話す
アサーティブな説明とは、具体的には次のようなものです。
まず、事実を簡潔に示します。
- いつ
- 誰が
- 何の目的で
- どのように支出したか
そして、それを裏付ける客観資料を添えます。
- 契約書
- 請求書
- メールのやり取り
- 議事録
- 手帳やスケジュール記録
「こういう事実があり、こういう根拠があります」と静かに、しかし明確に示す。これがアサーティブな対応の核心です。
言わないことも、アサーション
アサーションは「自分の意見を伝える」だけではありません。
言わなくてよいことを言わない、という判断もアサーションのひとつです。
税務調査では、余計な一言が新たな論点を生むことがあります。聞かれていないことまで話す、感情的な言葉が口をついて出る——こうした場面は少なくありません。
「何を言うか」と同じくらい、「何を言わないか」を意識することも、調査対応では重要です。
アサーションは準備から始まる
調査当日に冷静でいるためには、事前の準備が不可欠です。
- 論点を整理しておく
- 資料を手元に揃えておく
- 想定される指摘に対する説明を考えておく
準備があるから、落ち着いて話せる。落ち着いているから、アサーティブに伝えられる。
アサーションは、その場のテクニックではなく、準備に裏打ちされた姿勢です。
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